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初回相談約20分

初回相談では何を準備すれば良いですか

監査法人への相談前に揃える資料・伝える事項・当日の流れを解説

初回相談で準備したい資料

分類主な資料・情報監査法人が確認する目的
相談の目的法定監査・任意監査・IPO・金融機関要請など適用法令、監査範囲、報告書の利用者を特定する
希望日程対象期間、決算日、報告希望日、提出期限受嘱審査、契約、監査計画に必要な期間を確認する
会社概要登記事項、事業概要、沿革、拠点、許認可事業特性、規模、法令、監査リスクを理解する
財務情報直近の決算書、試算表、総勘定元帳、予算主要勘定、取引量、決算状況、工数を把握する
組織・グループ組織図、株主構成、子会社・関連会社一覧監査対象、連結範囲、関連当事者を確認する
会計・内部統制会計方針、決算手順、業務フロー、システム会計論点と証拠の作成・保存状況を確認する
重要事項M&A、資金調達、訴訟、減損、継続企業など専門家の要否、監査難易度、追加手続を見積もる
過去の監査監査報告書、指摘事項、前任監査人の情報初年度対応、引継ぎ、未解決事項を把握する

この表の資料がすべて揃っていなくても相談は可能です。用意できる資料、作成中の資料、存在しない資料を区分し、作成中のものには完成予定日を付けます。資料不足を隠すより、現在の状態を正確に共有する方が現実的な提案につながります。

01. まず押さえるべき結論

  • 初回相談の目的は、その場で監査意見や最終見積りを得ることではありません。会社と監査法人が、依頼する業務の種類、財務報告の枠組み、対象期間、利用者、期限、会社側の準備状況を確認し、監査契約を検討できる状態にすることです。
  • 監査基準報告書210は、監査業務の契約条件を合意する前提として、適用する財務報告の枠組みや、財務諸表の作成、内部統制、監査人への情報提供等に関する経営者の責任を扱っています。会社が「決算書も会計判断も監査法人に作ってもらう」と考えていると、役割分担が成立しません。
  • また、監査法人は相談を受ければ必ず契約できるわけではありません。独立性、利益相反、経営者の誠実性、監査リスク、必要な人員・専門家、繁忙期の日程などを確認する受嘱審査があります。初回相談では、良い情報だけでなく、未解決の会計問題や決算遅延も率直に共有することが重要です。

02. 最初に監査の目的と期限を整理する

(1)なぜ監査が必要なのかを一文で説明する

会社法上の会計監査人を設置する、投資契約や融資契約で監査済み財務諸表を求められた、株主へ任意監査報告書を提出する、IPO準備を始めるなど、監査の目的によって対象と進め方が変わります。

「監査を受けたい」だけでなく、「誰が、何の判断に、どの財務情報を使うのか」を整理します。報告書の提出先や契約条項がある場合は、該当部分を提示します。監査ではなくレビューや合意された手続が目的に合う可能性もあるため、成果物の名称を先に決めつけず相談します。

(2)対象期間と監査報告希望日を示す

対象となる事業年度、決算日、比較情報の要否、連結・個別の別、監査報告希望日、株主総会・金融機関・投資家への提出期限を示します。複数年度の監査が必要なら、各年度の財務諸表が確定しているかも伝えます。

「できるだけ早く」では監査法人が人員を確保できません。社内の決算完了予定日、資料提出可能日、監査報告が必要な最終日を分けます。期限に余裕がない場合は、その理由と変更可能な日を明確にします。

(3)監査対象となる法人と拠点を確定する

親会社だけか、子会社を含む連結財務諸表か、国内外のどの拠点が対象かを示します。子会社一覧には、所在地、事業、持株比率、決算日、売上・資産規模、現地監査人の有無を記載します。

組織再編、買収、売却、休眠会社がある場合は、対象期間中の変化も重要です。現在の組織図だけでなく、期首から期末までの異動が分かる資料を準備します。

03. 最低限準備したい会社・財務資料

(1)会社概要は短く一つにまとめる

会社案内がなくても、設立年月、資本金、株主、役員、従業員数、事業内容、主要製品・サービス、販売先、仕入先、拠点、許認可を2〜3ページにまとめれば十分です。登記事項証明書、定款、株主名簿、組織図があれば添付します。

監査人は、会社がどのように売上を得て、どの取引と残高が重要かを理解します。売上の計上時点、契約期間、返金・解約条件、在庫の保管場所、外部委託の範囲など、財務数値へつながる業務の特徴を説明します。

(2)財務情報は最終版でなくても版を明示する

直近2〜3期の決算書、当期の月次試算表、予算、資金繰り表を用意します。初回から総勘定元帳や全証憑を提出する必要は通常ありませんが、勘定科目別残高や取引件数が分かる情報があると、監査範囲と工数を検討しやすくなります。

未確定の試算表を共有する場合は、基準日、未処理項目、見込まれる修正、確定予定日を記載します。複数の会計データがある場合は、どれが基準データかを明確にします。

(3)重要な会計論点を先に開示する

減損、引当金、繰延税金資産、収益認識、企業結合、関係会社投融資、継続企業、暗号資産、ストックオプションなど、判断が難しい項目を一覧にします。税理士や他の専門家の意見書がある場合は、その前提と結論も共有します。

過年度の誤謬、帳簿と決算書の不一致、証憑不足、長期未解決残高なども初回相談の重要情報です。契約後に判明すると、予定工数・報告時期・監査意見への影響が大きくなる可能性があります。

04. 組織・内部統制・ITの状況を伝える

(1)経理体制と決算プロセス

経理責任者、担当者、外部税理士、記帳代行、連結担当、システム担当の役割を示します。月次決算に要する日数、年度決算の工程、作成者とレビュー者、取締役会承認の流れも説明します。

人員数だけでなく、特定の担当者に業務が集中していないか、証憑と承認が残るかが重要です。退職予定、引継ぎ中、採用中の場合は、監査対応に必要な体制をいつ確保するか示します。

(2)主要な業務フローと証拠

販売、購買、在庫、固定資産、人件費、資金、決算・財務報告の業務フローや規程があれば準備します。文書がない場合は、取引開始から会計記録、承認、入出金、証憑保存までを口頭で説明できる担当者を決めます。

監査法人が知りたいのは規程の冊数ではなく、実際に誰が何を承認し、どの証拠が残るかです。規程と運用が異なる場合は、その差と改善予定を隠さず伝えます。

(4)会計システムと外部委託

会計、販売、購買、在庫、給与、連結・開示に使うシステム名、連携方法、データ出力形式を示します。クラウドサービス、シェアードサービス、外部管理会社などへ重要業務を委託している場合は、契約と責任分担を整理します。

監査データをどの形式で出せるか、証憑へ追跡できるか、利用者権限と変更履歴が残るかは、監査工数へ影響します。システム更改中なら、移行日、旧新データの照合、アクセス可能期間も共有します。

05. 相談の種類ごとに追加する資料

(1)初めて法定監査を受ける会社

初年度監査では、期首残高に重要な虚偽表示が含まれていないか、会計方針が継続して適用されているかを確認する手続が必要です。前年度の決算根拠、残高明細、税務申告書、棚卸記録、銀行・債権債務の資料を準備します。

契約が期末後になると、監査人が期末棚卸へ立ち会えない、確認状を適時に発送できないなどの問題が生じます。監査が必要になる見込みを把握した時点で、決算日を待たずに相談します。

(2)監査法人を変更する会社

変更理由、現在の契約期間、監査報告日、前任監査人との協議状況、過年度の監査報告書、監査上の指摘、未修正差異を整理します。後任候補は、独立性確認と受嘱審査に加え、前任監査人への質問や監査調書の閲覧による引継ぎを行います。

前任との関係が難しい場合でも、会社が情報を選別して伝えるのではなく、事実と経緯を整理します。後任候補が決まらないまま現契約を終了すると監査人不在になるため、選任手続と引継ぎ期間を先に工程化します。

(3)IPO準備・資金調達・M&A

資本政策、上場希望市場、主幹事証券会社、申請予定期、監査対象年度、事業計画、株主・新株予約権一覧を準備します。関連当事者取引、オーナーとの資金取引、買収した会社、海外子会社がある場合は早めに説明します。

監査だけでなく、会計方針、決算早期化、内部統制、規程、連結・開示体制の整備が必要になることがあります。監査法人が担当できる業務には独立性上の制約があるため、監査と支援業務の役割分担を確認します。

06. 初回面談では何を聞かれるか

(1)事業・経営環境・リスクのヒアリング

面談では、会社の沿革、収益モデル、主要顧客、競争環境、資金調達、業績推移、経営課題を確認します。急成長、赤字継続、特定顧客への依存、新規事業、海外取引などは、監査リスクと必要な専門性に影響します。

経営者と経理責任者が説明する内容に差があると、追加確認が必要になります。事前に相談目的と主要論点を社内で共有し、経営、経理、必要に応じて法務・ITの担当者が参加します。

(2)受嘱可能性と監査体制の確認

監査法人は、独立性や利益相反、業務リスク、必要人員、業界経験、専門家、拠点対応を確認します。相談先がグループ会社へ非監査業務を提供している場合など、独立性の検討に追加情報が必要になることがあります。

会社側も、予定する監査責任者・担当チーム、繁忙期の体制、業界経験、IT・税務・評価専門家、質問への対応方法を確認します。「監査法人名」だけでなく、実際にどのチームが担当するかが重要です。

(3)次の提出資料とスケジュールを決める

初回相談だけで確定見積りが出ないことは珍しくありません。追加資料、経営者面談、事前調査、前任監査人との引継ぎ、受嘱審査を経て、監査範囲と見積りを具体化します。

面談後は、誰が、何を、どの形式で、いつまでに提出するかを一覧にします。口頭で合意した期限や前提条件も議事メモに残し、見積りと契約書へ反映されたか確認します。

07. 見積りを比較するときのポイント

  • 監査報酬の総額だけではなく、対象財務諸表、対象拠点、予定時間、往査・リモートの別、専門家利用、交通費、初年度追加作業、契約後の追加報酬条件を比較します。会社側が作成する資料と提出期限も見積りの前提です。
  • 安価な見積りでも、対象範囲が狭い、会社側の作業が多い、初年度作業が別料金、担当者が未定であれば、最終的な負担は大きくなることがあります。各候補へ同じ会社情報と条件を提示して比較します。
  • 監査報告希望日に間に合う現実的な計画かも確認します。受嘱審査、契約、監査計画、期首残高、棚卸立会、期末監査に必要な時間を無視した日程は、契約後に変更される可能性があります。

08. 機密資料を安全に共有する

  • 初回相談では、未公表の業績、顧客情報、資本政策、訴訟、M&Aなどを扱うことがあります。秘密保持契約の要否、資料の利用目的、閲覧者、保存期間、削除方法を確認します。
  • メール添付だけに頼らず、監査法人が指定する安全なファイル共有環境を利用します。個人情報や営業秘密は、相談段階で必要な範囲に限定し、一覧は匿名化して詳細を後から提供する方法も検討します。
  • 資料名には基準日と版番号を付け、差替え時は旧版を消すのではなく更新履歴を残します。誰が何を提供したかを管理すると、受嘱審査後の監査計画へ引き継ぎやすくなります。

(1)初回相談用の1ページメモを作る

面談資料の先頭に、相談目的、対象年度、決算日、監査報告希望日、対象法人、直近売上・総資産、経理体制、重要論点、希望する次のアクションを1ページでまとめます。監査法人が資料全体を読む前に、相談の前提と優先順位を把握できます。

資料一覧には「提出済み」「作成中」「該当なし」を付けます。作成中の資料は完成予定日と担当者、該当なしの資料は存在しない理由を記載します。初回面談で追加された依頼も同じ一覧へ追記し、メールや口頭の依頼を分散させません。

相談先が複数ある場合は、会社概要と基礎財務情報の基準日を揃えます。候補ごとに異なる数字や前提を渡すと、見積りの差が監査体制によるものか、提供条件によるものか判断できなくなります。

09. 初回相談でよくある失敗

資料を揃えるまで相談を先延ばしにする

棚卸立会や初年度の期首残高は、後から同じ証拠を得ることが難しい場合があります。不足資料があっても、必要時期を逃す前に相談し、代替手続や準備順序を確認します。

良い情報だけを提示する

決算遅延、証憑不足、過年度誤謬、経理退職、資金繰りの不安を契約後に伝えると、監査計画と報酬が変わります。未解決事項は、事実、金額、影響期間、対応状況に分けて説明します。

監査法人に会計判断を委ねる

財務諸表と会計上の判断を行う責任は会社にあります。会社案が未確定でも相談はできますが、取引の事実、検討した基準、選択肢、会社の暫定結論を用意します。

見積り金額だけで候補を選ぶ

報酬だけを比較すると、必要な監査時間、専門家、連結・海外対応、コミュニケーション方法の違いを見落とします。監査品質と会社側の総負担を含めて評価します。

10. FAQ

Q1.決算書が未完成でも相談できますか?

相談できます。直近の確定決算書と最新の月次試算表を用意し、未処理項目、見込修正、完成予定日を示します。何もない場合でも、勘定残高や取引規模が分かる資料を相談先と決めます。

Q2.初回相談は経理担当者だけでよいですか?

資料確認だけなら可能ですが、監査目的、経営課題、重要取引、期限を判断できる責任者の参加が望まれます。IPOや資金調達では経営者、必要に応じて法務・IT担当者も参加します。

Q3.相談したら必ず契約しなければなりませんか?

通常、相談と契約は別です。監査法人の受嘱審査と会社の候補比較を経て契約します。相談料、事前調査の範囲、提出資料の取扱いは面談前に確認します。

Q4.複数の監査法人へ相談してもよいですか?

可能です。同じ対象範囲、日程、会社情報を提示し、報酬、体制、専門性、会社側作業、追加条件を比較します。機密資料の共有先と返却・削除も管理します。

Q5.監査報告書が必要な直前でも依頼できますか?

受嘱審査、契約、監査計画、必要な監査証拠の入手に時間がかかります。棚卸立会や確認を実施できないと、監査意見に影響する可能性もあります。必要性が分かった時点で早く相談します。

CHECK LIST

11. 実務チェックリスト

  • 監査が必要な理由と報告書の利用者を一文で整理した
  • 対象年度、決算日、対象法人、連結・個別の別を確認した
  • 決算完了予定日、資料提出日、監査報告希望日を分けた
  • 会社概要、登記事項、定款、組織図、株主構成を用意した
  • 直近の決算書、当期試算表、予算・資金繰りを用意した
  • 子会社・関連会社・海外拠点の一覧を作成した
  • 重要な会計論点、未解決事項、過年度誤謬を整理した
  • 経理体制、決算工程、主要システム、外部委託を整理した
  • 過去の監査報告書、指摘事項、前任監査人情報を準備した
  • 未準備資料に担当者と完成予定日を設定した
  • 秘密保持と安全なファイル共有方法を確認した
  • 見積りの範囲、前提、追加報酬、会社側作業を比較した

12. まとめ

  • 監査法人への初回相談では、資料を完璧に揃えることより、監査の目的、対象、期限、会社の現状を正確に共有することが重要です。会社概要、直近の財務情報、組織・グループ構成、経理体制、重要論点を用意し、不足資料には完成予定日を付けましょう。
  • 監査法人は、独立性、受嘱審査、必要人員、専門性、日程を確認したうえで契約可否と見積りを判断します。初年度監査や監査法人変更では、期首残高、棚卸立会、前任からの引継ぎが加わります。相談を先延ばしにせず、面談後の提出資料と工程を一覧化することが、円滑な契約と監査開始につながります。

REFERENCES

参考資料

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